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批評や分析ではなく個人の感想だよ

だからみんな俺のこと大好きなんだなー。

 『これ描いて死ね』、2巻までの感想書いた直後に3巻が出た。

 島の名所巡り・SNS漫画とバズり問題・藤森さんの姉・手島先生初連載・カバーの藤田和日郎談義…どれも相変わらず濃密でしたが…出色エピソードは、赤福×ヒカル回の第13話『この世の90%はカスである』
 ヒカル登場直後、安海に漫研に誘われたヒカルが、すぐには返さず、ちょっとの間をおいてから断るシーンがあったのが気になっていたのですが、今回理由が判明。
 母からかけられた「(残りの10%であるために)牙鈍らせちゃダメ」という呪い。加えて、強い言葉を無意識に他人にかけてしまう自分の牙を理解しているがゆえ、誰かを傷つけたくない、というのが、彼女に孤独を選ばせていたっぽい。
 そんなヒカルの呪いを解き、漫画から本心を汲み取る赤福が、大変格好良かったです。
 人と直接のコミュニケーションを取ることが難しいので、代償行動として「漫画で人を感じたい」ヒカルが、赤福に漫画を通して自分を理解してもらった上で、手を差し伸べられたら、その手を取らずにはいられないよね、という。
 正直、今まで赤福に全然思い入れなかったのですが、マイペースで好き勝手する一方で、察する能力が高く思いやりがあり、作り手コミュニティ内の唯一の完全な読み手であることに引け目が一切ない、徹底して陽性なキャラクター造形は、漫研内でもいいアクセントで、今巻でだいぶ株があがりました。(明るい安海とかもなんだかんだ、作り手ゆえ嫉妬したり悩むキャラクターなので)
 ヒカルの赤福は漫画読むの上手いね」は、赤福という女の子を端的に表していると同時に、ヒカルの精一杯の「ごめんね」として伝わってきて、今巻一番突き刺さった台詞がこれ。
 でも、これは相手が神読者の赤福だから成立しただけで、「ごめんね」はちゃんと言えるようになったほうがいいと思うぞ!
 今後ヒカルがそのレベルの最低限の社会性を身につけるあたりの変化が描かれた方が好みだなと思うのですが、"女の子にヒントをもらい、ママより強くなる"上でそこの描写が必要なのかは、注目していきたいところ。先人超えの示唆は、熱くて嬉しい要素でした。
 安海、藤森、赤福は人当たり良い素直なキャラクターなので、衝突しても即解決でしたが、ライバルポジションとして第一印象悪めで登場したヒカルは、それぞれのキャラとの個別ペア回が丁寧に描かれ、おいしいポジション。
 陽性キャラによって太陽の下でも生きる場所を見出す陰性キャラが好きなので、ヒカルの相手は赤福が一番好きです。
 あと、どうでもいいですけれど、藤森姉の所謂おじさん構文がかわいくてほほえましくて。あの文面の気持ち悪さって絵文字とかよりもシンプルに、そこに性欲が隠されているか否かだけなのではという気づきが。
 次巻も楽しみです。