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批評や分析ではなく個人の感想だよ

ペルソナ4ザ・ゴールデン感想

 ペルソナ4ザ・ゴールデン』真エンドクリアー。プレイ時間は78時間。
 面白かった!ゲームシステム・ストーリー・キャラクター・BGM、全ての要素に隙がなく、15年前のゲームなのに今遊んでも夢中になれました。
 特にシステム面は秀逸で、天候システムによるダンジョンクリア時間制限は斬新でしたし、限られた時間の中で、パラメーターアップで自分磨き→コミュを開放してペルソナを強化していく方式は、日常要素と育成要素がマッチした面白いシステムでありました。
 あと、これは私がシリーズ初プレイなのも大きいですが、ライトゲーマー寄りのつくりだったのもよかったです。意識しなくても強いペルソナがガツガツ作れましたし。りせちーのサポートがチートすぎて最終的には難易度ノーマルだとヌルくなってしまいましたが。
 メインキャラクターの子供たちも、いきいきしていて可愛かったです。基本的に陽性のキャラクターで構成されつつも、明るさ一辺倒ではなく、「抑圧された自分」を象徴するシャドウの存在は、キャラクターの奥行きを出すのに一役買っていて、改めて設定面が秀逸。
 また、主人公総攻め構造でありながら、主人公が関わらないキャラクター同士の絡みも想像できるのは、キャラクターの相関図の練り具合や台詞まわしの巧さがなせる技だなと。例えば、花村なら同居人のクマや気兼ねない異性の千枝、雪子なら親友の千枝や幼馴染の完二、みたいな。…その流れで、毒物オムライス事件や物体Xクリスマスエディションを通して、健気な小学生として各メンバーにインプットされた菜々子ちゃんが、メンバー全員の庇護すべき天使となり、ヒロインレース独走状態になるのとか、超面白かったです。
 ストーリーでは、〈襲われると目星をつけていた人物が失踪→ダンジョン攻略のために鍛えまくる→救出に行く〉を繰り返す都合上、良くも悪くもやや単調な印象があったのですが、生田目確保から菜々子死亡を経て、生田目の処遇を巡って花村とはじめて意見が対立する場面で「このゲームこんなことするんだ!」と驚きました。
 あのシーンは普段明るくて軽い花村が、生田目殺害提案したことにも恐怖を感じるんですけど、「ただ“テレビに落とす”…それだけだ」と直接的な殺害ではないことを強調したり、「関わりたくないヤツは、出て行ってくれ」とドン引きする女性陣が俯瞰でちゃんと見えていたり、感情的な行動などではなく普通に頭が冷えていて、普段とのギャップが容赦なく怖いのはよかったです。
 振り返って考えると、マヨナカテレビの件で大切な人を失ってしまったの、花村だけでしたし。その溝は多分心の奥にずっとあって、それが菜々子死亡という土壇場で発露しまったっぽい。
 ここを乗り越えた後に、生田目が「仕事も愛する人も失って、テレビに入る力のみ残り、向こうを聖域と信じ込んで無意識にヒーロー気取りだった」人だと語られますが、これは自称特別捜査隊も同じで、この明暗を分けるのが、『思考停止せずに考え続ける』ことであり、そして、その分岐点が、生目田を殺害するか否かだったのかもしれません。
 ここはホント名イベントで、この前後で物語のステージが変わったと思います。
 ただ、ここから通常エンド→真エンドをたどったときに、真エンド自体は真実を追い求める今作の終着点として好きですし、ラストバトル演出もよかったのですけれど、あえて通常エンドと分ける必要あったのか疑問。通常エンドの延長線上で、やってもよかったことなのでは。
 通常エンド時点で明らかに謎が残ったままなので、今作のテーマ的にプレイヤーに主体的に真実を突き詰めてほしい意図があったのかもしれませんが、残った謎に疑惑を持ったとしても、その全容を描いてくれるだろうというプレイヤーからスタッフに対する信頼関係は特にないので。(これは、私がアトラスゲーほとんど通ってないことも大きいかもしれませんが。)手法としても、攻略情報なければまずほとんどのプレイヤーがたどり着けないのは、どうかと思います。正直、スタッフのしてやったり感みたいなのはあって、萎えました。
 ただ、真エンドの、クマの追加台詞
 「あそこがクマの居場所だって…今なら胸を張って言えるから。」
 は、まさにこの物語の果てだなと思い、そこは凄く好き。
 当初ただの賑やかし兼マスコットキャラクターだと思っていたクマのドラマが不意打ちで良かったのには、動揺しました。
 何も背景を持たないことに疑問すら抱いていなかったクマが、主人公たちと出会うことで、自分の存在に疑問を抱く。自分は何者なのか不安は心の隅に常にありながら、仲間や菜々子と結んだ「約束」をよすがに、人の世を生きることで『思い出』を獲得していく。正体は何物でもないただのシャドウだったものの、『思い出』があるから、既にクマはクマである。という結論は、物語の中で共に過ごした時間を論拠にしていることで、強い説得力を持ってうち出されました。クマが、特別捜査隊のメンバーの閉じたコミュニティだけではなく、菜々子や、ジュネスバイトを通して"社会"と繋がっているところも、うまく機能したと思います。真エンドの台詞変化も、もともとはシャドウであるということをちゃんと受け入れて、なお揺らがぬ自分をクマが得られているからこそだな、と。
 ということで、クマは個人的に、今作の裏主人公だと思っています。

 クリア時点での各レベルは、《主人公86、花村72、千枝82、雪子79、りせ86、完二71、直斗79、クマ75》
 とりあえず物理技で殴る脳筋戦法のため、主人公(パーティー必須)とりせちー(ナビゲーター)除くと、物理高火力の千枝がスタメン入りすることが多かったです。同じく物理型の完二は全体技が弱いので雑魚戦での使い勝手が微妙に悪く、レベル一番伸びず。とはいえ、各キャラクターの強さの格差はあまり感じず、この辺の調整は行き届いていたのは感じました。
 また、行き届いているのはバトルバランスのみではなく、台詞や演出でもいえること。バトル時、着せ替え時、待機メンバー時にそれぞれ専用会話が用意されていて、かつ特定メンバーの組み合わせ条件満たすことで変わるなど、作りこまれているのが楽しく、意識してスタメン変えるようにしていたので、ほとんどのキャラクターはそれなりに使いつくせたかなと思います。
 このように、「いろいろやってみたい」と思わせるのは、普通にプレイする分には網羅しないであろう隅々まで、丁寧に作り込まれていた今作ならではの長所と言えましょう。真エンドも、手法としては好みからズレるんですが、その流れの一環なのかもしれません。
 地方都市稲羽市という小さな箱庭を、家族や友達やバイト先の人・商店街やデパートなどの建造物・四季折々のイベント・都市伝説・殺人事件などを通して、丁寧に描写していくことで奥行きを持たせ、外部からやってきた主人公にプレイヤー感情を重ねて『郷土愛』を植え付ける。それがシナリオを進める推進力になるというゲーム構造が素晴らしい。
 「狭く深く丹念に作りこまれたJRPGというのが、今作の総合的な印象です。

 なお、真ボス戦最終パーティは、主人公、花村、千枝、雪子でした。
 最終ペルソナはアスラおう(主力)、サンダルフォン、マダ、イシュタル、アラハバキ
 コミュ進捗は以下の通り。

花村10
雪子10
マーガレット1
完二10
堂島8
りせ10
千枝10
菜々子7
キツネ7
直斗10
運動部10
小西弟10
死神老婦人9
学童保育5
ナース10
家庭教師7
クマ10
マネージャー10
演劇部10
足立2
マリー8

 6股した。こういうジゴロプレイできる(最低方面への)自由度の高さも、今作評価している点のひとつ。バレンタインイベントで女子勢からちくちく嫌味を言われました。当然。
 割と満遍なくコミュすすめられた中で、マーガレットと足立が際立って低いですが、シナリオ的な縛りがあった足立はともかく、マーガレットは知識ステ上げるのが遅かったのが痛手に。
 途中でシナリオからフェードアウトするマリーはコミュ10にすべきだったと後悔したのですが、その、ポエムを聞くのが…本当にキツくてですね…。これは個人的な感覚によるところが大きいですが、ツンデレ女子の愛嬌のつけ方として、苦手な手法でした。
 今作十分楽しんだ一方で、このような”笑い”に関しての感覚のズレというのはままあり、花村のホモいじりとか(リアリティの観点からそういうキャラがいてもいいの判断があったのかもしれませんが、少なくとも、善玉サイドかつ相棒ポジションのキャラの言動としては、どうかと思う)、周りから疎まれる図々しい醜女とか、引きます。これは時代による価値観の変動もあって、しょうがないのだろうけれど。

 好きなキャラは、完二、りせ、直斗、………それと、クマ。
 クマはクマ自体が好きというより、攻めた言動にも嫌味を感じないキャラクター性とか、背負っているテーマとストーリーの連動とか、山口勝平の演技が凄すぎ、などにより印象深い傑作キャラ。
 りせちーはぐいぐい引っ張り盛り上げる立ち位置が可愛らしかったです。先輩に近づきながらさりげなく女性陣を牽制するのが、全て計算であることを完全に開き直っており、最強の女。戦闘実況の台詞回しで他キャラとの生き生きとした絡みを見せてくれたり、花があるおいしいポジションでした。サポートとしても、なんじゃそらレベルでバフかけてくれて、全方位にチート。こちらも釘宮理恵があざとくてはまり役でした。
 完二は不良が実は…というベタなパターンですが、その「実は…」の先の要所がドカ盛りなのが意外性あって面白かった。シャドウが半ばギャグなのもあっていじられがちだった完二が、最恐キャラのりせちーにのみ耐性があるのは良いキャラクターバランスでした。また、直斗加入編の
 「いや、いい…ちゃんと吐きだしゃいいんだ。オレらはアイツを倒して、ケツ持ってやりゃいい…」
 は、大変格好良かったです。一途な頑張り屋なので、スキーの直斗とのTo LOVEるは、背中バンバン叩きながら良かったなあ!したい衝動に駆られる。まあ、俺さんは直斗と付き合っていますが。
 その直斗は加入ラストでしたが、探偵の肩書きから最終盤詰めの推理パートの切れ者っぶりが格好良かったです。なんか、いるとスムーズに話が進みすぎて、パーティー加入も遅れたような印象。
 ただ、『"男"も"大人"も探偵としての居場所を得るための手段であり、直斗が本当になりたかったものではい』という結論を経てからコミュで「女でよかった」を選択して恋愛√に進むの、嫌。直斗加入編の答えって、大人子供とか男女問答を飛び越えて直斗直斗に着地したと思ったので。直斗は主人公と付き合うんじゃなくて、男でも女でも関係なくずっと直斗が好きな完二にした方がいいのでは。なお、今作時点で脈はゼロです(世界残酷物語
 スクナヒコナもあわせて誰かに似てるなと思ったんですが、デジモンアドベンチャー02一乗寺賢&スティングモンだ。中の人も同じだし。

 2周目も遊ぶつもりなので、全キャラコミュMax狙って田舎のナンバーワンホストになりたい。足立添い遂げルートもあると聞きました。マジか。