イース8クリアした
ダーナ…………………………….
としか言えなくなるのは今作をプレイした人なら誰でも通る道でしょう。
イース冠は完全初プレイでしたが、全く問題なく楽しむことができました。
個性豊かな漂流者たちに、爽快感のある出来の良いバトルシステム、無人島を舞台にした探索の楽しさなど、目新しさはないものの、古き良きJRPGを現代版にブラッシュアップした構造で、手堅い作り。
バトルの相性は殆どじゃんけんで単純ですが、難易度ノーマルでプレイする分には各キャラの強さの格差はほとんどなく、調整が行き届いていることを実感できた部分。(光ダーナが例外の強さですが、エタニア編でしか使えないので許容範囲)
まあ、同属性キャラ性能を差別化する上でなんとなく、雑魚戦向き/ボス戦向きに大別されてる傾向も見えますけど…。サハドとか一撃の遅さによるゲージ回収の効率の悪さが気になったんですが、マグナスウェイブが対雑魚戦で強すぎて、これ一本で食ってける性能になってるあたり、バランスの取り方が力技すぎておもしろい。
特に今作、自分HPに対して一撃でダメージ多めに持っていかれるので、ジャスト回避防御がわりと重要っぽいのですが、アクション下手くそプレイヤーは発動タイミングが掴めず…代わりにこまめな操作キャラの入れ替えでカバーできるようになっています。その上で「誰を動かしても楽しい」のはシステムと長所がうまく噛んだ部分。
故に操作キャラの死にやすさはあるものの、非操作キャラのHPが減りづらいように調整されてたのはうれしい配慮。この部分、直近プレイした聖剣3でストレスなところだったので。
探索要素に関しては、ブレスオブザワイルドが私個人の中で完全に探索ゲーのエポックメイキングになってしまっているところがあり、さすがに物足りなさはあったのですが、ワープは快適・シームレス式戦闘で移動がストレスフリー・景観が美しい、と十分水準以上の出来。
格上古代種がフィールドにぽこぽこいたのも、緊張感が出てよかったです。
とまあ基本システムは良く出来ているものの、序盤は探索と漂流者発見の序盤の流れが単調だったのですが、中盤から終盤にかけてダーナを軸に展開していくストーリーが非常にツボでした。
とにかくダーナが凄く格好良かった!中盤からの参戦なのに誰よりもヒーロー力とヒロイン力を積み上げていく立ち位置ながら、その優遇っぷりが全く嫌味にならない、明るくて前向きな良い子で、本当に素敵な女の子でした。
助けるべき人が1人でもいる限り運命に絶対負けない精神力Sクラスウーマンですが、現状の受け入れ難さからダーナに当たってしまうエタニアの人々や、傍観する護り人たちなどに対する、運命に負けてしまった者たちへの優しい眼差しをも持ち合わせているのが、ダーナの良さだなあ、と。
3章からは、アドルとダーナの意識共有→ダーナと現代で出逢い眠っていた理由を探る→ラクリモサを止める、という展開にシフトしていくわけですが、ダーナが眠っていた理由に関してはかわいそうな人柱オチだろうなーと思ってたら、次世代アドルへの伝達と自分の護り人化拒絶って、全人類救済のための無理ゲーに挑むため自身の復活を前提に据えてたバリバリの強者で、滅茶苦茶格好良い。
強メンタルはありますがヒイロカネメンタルというわけではなく、彼女の心を保たせていたのが、いずれきたる未来であったアドルの存在だったあたり、少女らしい脆さもちゃんと書かれて可愛かったです。
このダーナにとっての希望の象徴としてのアドルのあり方は、別個に進行していたアドルとダーナのストーリーの接続の手段としてうまかった部分。
また、ラクシャの
「エタニアではみんなに頼られる立場だったかもしれません。でも、ここではみんなが同じ漂流者です。」
は、イース8が無人島漂流譚である意味づけが生きて、作中一番好きなセリフ。
誰かを救う予知の力がありながら、その力を行使することを恐れ母を死なせてしまった後悔から、手の届く範囲の人々全てを守りたいと目と耳を塞ぐことをやめたダーナですが、それが巫女としての立脚点ゆえに、一度エタニア全ての人々をその手からこぼれ落としてしまったことは夢の挫折ともいえるわけで。
だからこそ、世界の人々や、自分と同じ境遇を辿った護り人たち、そしてなにより、一番近くにいた親友のサライを救ってみせるのは、彼女が自ら望んだ夢の成就。
そのために人の理を外れ上位の存在となってしまう彼女の結末は自己犠牲ともいえるわけすが、ダーナはこの選択を後悔しておらず、彼女自身は決して犠牲になどなっていない。故にアドルに万感の思いで感謝を伝え、アドルも微笑みながらそれに応える。
ここで流れる感謝の涙でラクリモサオブダーナの真の意味が浮かび上がるのが、美しい(道中こぼれそうな涙を拭って抑えるのみに留めていたのは意図的なものでしょうし)のですが、この涙を踏まえることで、スタッフロールの何のしがらみもないダーナの笑顔が、より胸をうちます。
ダーナの生き様って、泥臭くて諦めが悪くて滑稽なのに、だからこそ鮮やかで儚くて美しくて格好良い。今年ナンバーワンヒットキャラです(暫定)
どうしても今作を語るときにダーナの魅力に寄ってしまうのですが、それ以外のキャラも良かったです。
特に、ヒュンメルはお気に入り。几帳面・慈愛深い・ジャグリング得意・ピクルス手作り・「ショータイムだ」、などのオモロ要素が盛られていったヒュンメルの過去が、それら全ての要素を極めて真面目に包括した納得のできるもので、外連味だけで押し切らない丁寧なキャラ描写が貫かれたのは好みだったところ。
プライドの高いお嬢様から精神的に大きく成長していくラクシャ・ちょっと臆病だけど良い家庭人の超人格者で名言製造機サハド・野生児だが社会性は高く誰と絡んでも会話が楽しく展開されるリコッタなど、各キャラ描写の良さは本作の大きな武器になったと思います。
パーティーキャラ掘り下げの際ダーナ除き「父子」が共通した要素となっているのも、横の関係性の書き出しに奥行きを与えていて上手かった部分。リコッタと接してるとお父さんの顔になるサハド好きだなーと思ってたら、スタッフロールのサハドのイラストがほんと良くて。
また漂流村NPC一人一人に関しても無人島生活を送った上での人間的な脱皮が書かれていて、キャラを大事にしているのが伝わってきました。ふとももあらわにするシスターがあざとい。
全体的にかなり満足の出来だったのですが、あえて不満点を挙げるとしたら、3章でダーナを支柱に物語が動き出すまでさっぱり面白くないのは気になりました。
決してダーナだけが魅力のシナリオではないのですが、ダーナが物語の根幹を占めているのに、普通にプレイしてて登場まで15時間近くかかるのはスロースターターすぎます。
それを抜きにしても、空と海と大地の無人島漂流冒険譚から、突如殺人鬼が横入りしコミュニティを引っ掻き回すクローズドサークルに突入する2章は超展開だよ。
意図としては漂流者の結束を固めるための前振りとしての疑心暗鬼だったと思われますが、なにぶん1章と3章以降と雰囲気もなにもかも違いすぎて、ここだけ別のシナリオライターが入ったのではないか疑うレベル。
私かなりクローズドサークルミステリが好きですが、このゲームにこの展開を求めていなかったし、疑心暗鬼になったクソ貴族のクソ行動もストレスで(後半改心でフォローはありますが)単純に不愉快でした。
キルゴール先生のキャラクター性(悪の美学にこだわる狂人・コマ送り猛ダッシュ・ワイヤービシビシ)も完全に軌跡の結社キャラで、あえて今作でやる必要があったのか激しく疑問。犯人あて要素も医者の卵リヒト登場で即予想できちゃいますし。
エタニア編の地下迷宮もあまり楽しめなかったです。
前述したようにアクション下手くそプレイヤーは戦闘中もこまめに仲間を変えつつ回復アイテムも多めに用意してバトルに挑んでいくことになるのですが、エタニア編だとダーナ単独行動になってしまうのに加えて、アイテムが制限される中でうまくやりくりしていかないといけないのは、緊張感よりも自由度の低さによるストレスが上回ってしまったところ。
あと、エタニア編は滅び前提の逼迫感によってメインシナリオをグイグイ読ませるので、地下迷宮で寄り道している暇がないと感じてしまうのは、システムとストーリーの擦り合わせがうまくいかなかった部分かなと。
地下迷宮最深部のダーナの
「だったら自分が納得行くまで——私は私を諦めないかな」
は、ダーナは如何なる巫女なのかがよく出ていて、好きですが。
地下迷宮最深部のイオちゃんとダーナの問答はかなり今作の根幹の部分が出ていると思っています。
イオちゃんの“いずれ消えてしまう人の営みに意味はあるのか?”に対する
ダーナの“今自分があるのは先人の選択を受け継いでいるからであり、未来を生きる人々も自分を受け継いでくれるから、無意味ではない”
は、古典的な「過去があるからこそ今があり、今があるから未来がある」ですが、
〈過去→現在→未来〉に〈イオ→ダーナ→アドル〉を具体的な象徴として設置することで、それを実際に視ているダーナが言葉にした“継承”にバッチリ説得力を持たせているのが、お見事。
また、これによってダーナの物語だけではなく、アドルの無人島漂流譚の物語も、違う世界の夢のお話ではなく、同じ大地を生きる人々の物語として連動しているのがすばらしい。
なんかまだ書き足すかもですが、とりあえず総評としては、繰り返しますがダーナほんと好き。ダーナと出会えて良かったです。
スタッフロールで胸がいっぱいになって、こういう気持ちを味わいたくて、私はRPGをやるんだな、と思います。