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批評や分析ではなく個人の感想だよ

ケムリクサみた

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今後お付き合い(?)する上でいろいろ大変そう。

 

すごく面白かったです。

面白かったんですが、それ以上に好きという感情が先行してしまう作品でした。自分の好みすぎて

 

総括すると『りんが好きを見つける物話』なのですが、その過程において、さまざまな要素がまかれています。姉妹の謎、わかばの謎、ケムリクサの謎、ムシの謎、日記の謎、世界の謎。

そんなケムリクサですが、作品を貫くのは【愛】だと思いました。

そしてこの愛は、大きくわけて3つの関係性にあてはめられます。

 

りんとわかばの恋

りりとワカバの親

姉妹達の家族

(ワカりりは恋愛と解釈してもいい気がしますが。守られる子供と庇護する大人の役割が強調されていたので、この表記で)

 

そもそもことの始まりは、りりがワカバを助けたいと願いリスキーな賭けに出たことによるものです。

ワカバに対するりりの『好き』を受継いでりんはわかばに恋愛感情をもつことになります。1話爆速でわかばにデレるりんを観た時はチョロいな~と思いましたが、これもどうやら意図的な仕込みだったっぽい。

しかし、りんが作中わかばと交流を経ていくことにより、ワカバ/わかばに対するりりから受継いだ『好き』は、りん本人の『好き』へと変化していきます。

 

変化自体はじわじわと・・・なのですが、明確な転機は8話かなーと。

あなたたちが死んだら泣くのはあたりまえだし、何より絶対に死なせないという、姉妹に対しての情と覚悟を示したわかばのまっしろな本心に対し、りんが「私も、これ以上誰も死なせたくない。そうさせない、お前も含めてな」と本心で返すシーン。

直前7話でりんの「したいこと」を引き出したのがわかばであることも機能し、ここでやっとわかばがりんにとって大切な人となったのだと思います。りん本人はそれに無自覚ですが。

 

では、りんがいつ『好き』を自覚したかというと、これはわかりやすく、初めてわかばの名前を呼ぶシーンかなーと。

「あれはきっとりりの因縁でもある」という台詞から、りりの悲願も含めてりんは根に挑むこととなりますが、ワカバの死を目撃し彼を助けることを放棄したりりを見てもなお、りんがわかばを助けるために足掻くのは、好きだから。

そして、この『好き』はりりから継いだものではなく、りんだけのものだから。

「わたしの・・・好きなように。りりとはちがう。わたしのしたいことは・・・!」は、そのためかなと思いました。

 

また、ワカバ「好きなことして楽しく生きて」りり「好きに生きて」りん「わたしの好きなように」と好きに生きることを受継いでいるわけですが、

ワカバを失った末に自暴自棄で書きなぐられたりりの「好きに生きて」をりんが解釈したとき、【好きなわかばを失わせないことが好きに生きること】というひっくり返しがなされているのが実にうまい。

 

そしてこの作品のらしさが出ているのが、りんの『好き』を応援する者として姉妹が配置されていること。

りんがわかばを『好き』であることを自覚できたのはりつとりなが背中を押したからですし、『好き』を守ることができたのは死人トリオ(ひどい呼び方)の協力があったからです。で、なぜ姉妹がりんの恋路のお膳立てするかというと、今までりんが姉妹の『好き』を応援してくれたからだ、というのが、優しい。

 

ラストシーン、りんが告白できたのは生きる希望の光をこの目で見たからで。ワカバが遺言で示したように、今作において「好きなことをする」=「生きる」なのだと思います。

 

3つの愛が冒頭に述べた『りんが好きを見つける物語』に集約される脚本の丁寧さ、素晴らしかったです。

 

 

キャラクターについて。全てのキャラが賢く優しく、その上できっちりキャラ立ちもしてるのでみんな好感度高いのですが、そのぶん、これ!というキャラが思い浮かばず。推しカプはわかりんなのですが(男女カプ厨)

 

あえてあげるとするならば、りつさんかなあ。一見おしとやかに見えて頑固女がもともと好みなのですが、みどりちゃんの存在で姉妹に迷惑をかけている自覚があっても手放す気はないところとか、それでも負い目がずっとあって、みどりちゃんが役に立って初めて泣いてしまうところとか。奥行きのある造形でよかったです。

「いつも姉さんをしてくれてありがとう」「妹をしてくれてありがとう」いい会話。

 

りつさんがわかばくんに照れるシーンを見て、ハーレムものだったら心底嫌・・・と思ったのですが。そんな懸念は不要でした。りつさんの『好き』は一貫してみどりちゃんで、他の姉妹たちの多種多様な『好き』もぶれず。

本作の軸はりんちゃんとわかばくんの恋ですが、恋愛を至上とせず、各々の『好き』を優しく尊重しあう現代的な価値観も好みなところ。

 

あと、りつりなの語尾が古いラノベみたいだなあと思ってたら、耳がよくない姉妹達への配慮だったっぽい。さらっとした描写で障害を普通に受容し合うセンス凄。

前述したりんちゃんチョロインの引っかかりに理由づけがなされたのもそうですが、けもフレ一期も含め、たつき監督の倫理観道徳観は好みに合うところ。

 

 

けものフレンズ1期がなかなかよかったので軽い気持ちで見たのですが、こんなによいボーイミーツガールだとは予想外でした。他irodori作品もみようと思う。