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批評や分析ではなく個人の感想だよ

マロニエ王国と七人の騎士40話「ウィジの話」感想

 ハラペコ、髪ブラで表紙を飾る(週プレグラビア感)
 なお、表紙のハラペコと獣使いは、今回一コマも出ません。
 
 宮殿破壊・倒木・国内大惨事により、戦争で国内が荒れた過去がフラッシュバックし泣き崩れる御上様。そこに、謎の幽霊(浮遊するリュウグウノツカイ)(マジで何)から差し出される、復元された御上様の思い出の飾り。
 そして、御上様の過去編に突入。
 ………ハラペコ編、本当にクライマックスなのか!?

 物覚えが悪く三兄弟の名前が覚えられないので、書いておきます。
 
御上様(ウィジャヤ)長子
月様(タラ)次姉
冥府様(ムハヤット)末弟

 2500年前の燃やされる前の世界樹が、磯野宏夫のイラストみたいで格好良い。
 暗がりの中、戦争で負傷した弟を迎えに夜道を走る女が出会ったのは、背中を負傷し気を失った男。女は男を回復させるため、小屋の中へ運び入れる。
 女の弟の名前はムハヤットだと判明し……御上様、女だったという衝撃の展開
 御上様の憑依先が中年男性の国王様だったことがミスリードとなり…そういえばここ明言されていなかったなとは思うものの、いやー、全然予想できませんでした。ビックリ。
 食べ物の豊富な国は生き物の国からの侵略を防いでいる最中。領主のムハヤットはジャガー王を討ったものの、いまだ生き物の国の兵は引かず、士気のためにも戦地に戻ろうとする手負いのムハヤットを、止めようとするウィジャヤ。
 家族を大切に思っているものの、性格的に悪態をつくことしかできないウィジャヤは、無関係の男の前では気負いなく家族への愛着を語り、男も過酷な戦地から離れて安らぎを得、小屋の二人はなごやかな雰囲気。
 
 「お前に礼がしたい 何か望みはあるか?」
 「望み そんなのはこれ以上 誰も亡くならず 戦が終わることしかなかろうが」

 ムハヤットの思い人ではあるものの領主の嫁にはおよそ相応しくないであろう女中を、義妹として大切にいたわり、体の弱い妹を細やかに気遣うウィジャヤから、家族想いで実直な性格が汲み取れます。まあ、それゆえに後年ああならざるを得ないんでしょうけど。

 「ウィジよ 派手な獣のようななりの男は見なかったか」
 「見てはおらん ジャガー王はムハヤットが討ちとったのだろう」
 「川に落ちたのだ あのケガは助からん」

 え。
 
 男の食事を運びに、甲斐甲斐しく小屋に向かうウィジャヤ。
 「雨の中来てくれるとは 結婚するか?」
 「しないぞ 一人で用が足せるようになってから言え」

 よ、よせ……

 「そうだお前 名はなんという 聞いてなかったな」
 「余か?」

 迂 闊
 
 ジャガー王、結構天然。
 かくして、男の正体は8のジャガー王でほぼ確定。そして、命名「ヨカ」。生き物の国編ではアッパー系だったジャガー王が、食べ物の豊富な国編になってからやけにしんみりした雰囲気なのが気になっていて、嫁の月様への個人的な感情由来かと思っていたのですけれども、これはどうも違うっぽい。

 結局ムハヤットは手負いのまま出陣。蜂に刺されて泣く弟をおんぶしながら励ますウィジャヤの思い出の遠景カットが良くて、今回のベストコマはここ。
 一方のヨカは御上様の思い出の品となるカゴの飾りを作成。背中の傷に化膿止めを塗られながら、自分のことを語るヨカ。ヨカは悪運が強く、同じ皿の魚を食べて父と兄を亡くしつつ自分だけ生き残っていたことをはじめとして、生きることに対して負い目のようなものがあった。

 「ずっと考えている なんで俺は死ななかったか 俺がここにいることに意味があるのか」
 「この世界でまだ生きて戦う覚悟をするのは 少し気が重いな」

 死地へと向かう弟、待つ妹と義妹の涙、岸に流れ着いた遺体…遺された者であることから、ウィジャヤはヨカの痛みに触れる。

 「なかなか死ねんなら戦が終わるまで生きぬいてカゴでも編んで売ればよかろう」「そうやって人の役に立てば生きとる意味も出るじゃろが」
 「俺がカゴ職人とは…考えたこともなかったぞ なるほど 悪くない」

 ハッキリもの言う女がタイプなヨカはウィジャヤに抱きつき、王からカゴ職人への転職を匂わせ、ウィジャヤ困惑でつづく。

 御上様の性別、ジャガー王とのロマンスと、今回はインパクト重視の作りでしたが、現在軸のことを考えると、
 
・「誰も亡くならずに戦が終わる」に頷く戦いの神
・侵略者を介抱してしまった御上様
ジャガー王に嫁いだのは月様
・復讐心で自我を失いジャガー王への憎悪以外の感情を失った御上様

 えぐい。
 ここまでお膳立てされているならば、御上様がどうして狂わざるを得なかったのかを容赦なく書いてくれることを期待したいです。

 また、ハラペコのドラマというのは「ほんとの僕」を"かわいい少年の姿"ではなく"地の果ての怪物"に置いて引け目を感じていたところ、少年でも怪物でも関係なく、共に過ごした時間から感じ取れた素の姿こそがほんとのお前だ、という『社会との絆の接点』をもとにコレットがハラペコを繋ぎ止めるお話でありました。
 ジャガー王も、ウィジャヤとの交流を通して"侵略者ジャガー王"と"カゴ作りが得意なヨカ"という二面性を抱えたわけですが、彼にまつわる「ほんとの僕」を見出すことができなかったのが、ウィジャヤなのではないかなとは思うところ。

 にしても、おしとやかで病弱な人妻という、ヒロイン力高い月様がクールダウナー系のゾーイに憑依したのは今作らしいところだなーと思っていたのですが、真ヒロインは中年男性に憑依した方だったという…
 月様なんか色っぽくて好きなんですけれど、ジャガー王の好みが判明した現在、彼には勿体無いと思う。