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批評や分析ではなく個人の感想だよ

ギャグエロ漫画に泣かされる

 『あらくれお嬢様はもんもんしている』無料公開分の最新話(30話後編)読んだら普通に感動してしまったので書きました。

yanmaga.jp


 1話無料で読めるっぽいので、まだ読んでない方おすすめです。

 疑似シックスナインしたり、ラブホでアフタヌーンティーを提案したり、ヒロインが真面目オナニーでエクスタシーしてる漫画に、私もまさか泣くと思わなかったよ!
 今回、どうしてこんなに胸を打つんだろうとずっと考えていたのですが、あらもんがずっと大切にしてきたものが一度実を結んだのが、30話後編だったのかなと。
 この漫画、パッと見はただのギャグエロ漫画ですが、対人コミュニケーションにおいて『素直になる』ことを肯定する描写が徹底しており、恋愛、ひいては人間を描くことにとても真摯なんですよね。
 そのうえで、主人公の椿様は、最初の頃は高飛車で、財力と権力で物事を解決し、もう一人の主人公の起立も真面目だが物言いがきつすぎる、素直になれない不器用な人間達でありました。初期椿様って相当嫌な女なのですが、性格悪アクション後に受けるしっぺ返しが結構容赦ないところが、作者を信頼できるところ。その後のフォローも描かれるのでキャラへの愛着もきちんと感じますし。
 椿様は起立を陥れようと(気を引こうと)しては、何度も失態を見せ、傷つき、傷つけ、喜び、逆に喜びを与えたりしながら、だんだんと素直な言葉や感情が出せるようになりました。そして、どんどん魅力的になっていく椿様の変化に伴い、彼女を間近で見てきた起立も、気づかないふりをしていた自分の本音と向き合わざるを得なくなる。
 29話後編は起立の自覚のフェーズだったわけですが、そこを踏まえた30話前編のハムレットの台詞
「私は高慢で 執念深い 野心もある 多くの罪を抱えていて実行に移す時間もないほどだ こんな人間が天地を這ってなんになる?みな悪党だ誰も信じるな 尼寺へ行け」
 は、起立から椿様への心情をあらわしたものでしょう。
 ひたむきにハムレットを演じる椿様の凛々しい姿、椿様の口から(ハムレットの台詞として)起立に突き付けられる彼女に対する感情、藤咲さん(きり×ちは厨)に無自覚に背を押される、という3点が揃うことで、起立が、拒絶されること恐れて伝えることができなかった素直な気持ちを椿様に伝えることが出来たのは納得でしたし、いつものような"クソデカフォント&トゲトゲ吹き出し"ではなく、"通常フォント&弱弱しい線で描かれた吹き出し"で、自信なさげに訥々と言葉を紡いでいるのがわかり、胸にきます。
 椿様も一度は戸惑いながら高飛車返答しつつも、ちゃんと笑顔と「ありがとう」を返すことができ、このシーン読むたびに今までの紆余曲折が走馬灯のように脳内を駆け巡り…じーんとくる。
 あと、表情のひとつひとつが素晴らしい。椿様の演劇を褒めながら自分の言葉に戸惑い目線を合わせられない起立、起立の言葉が不意打ちで顔が一瞬取り繕うことができない椿様、なんの打算もない椿様の「ありがとう」の微笑、安堵しつつニヤける起立、どれも瑞々しく、二人のことが愛おしく、本当に幸せな気持ちになりました。
 来るところまで来てしまった感があるんですが、槍野との誤解も解けてないのでその辺クローズアップされるのかな。単行本おまけによって結婚が見えているので安心して読んでます。今後の更新も楽しみです。