.

批評や分析ではなく個人の感想だよ

マロニエ王国と七人の騎士43話「全部神様が決めたこと」感想

https://amzn.asia/d/h1aVgoY

 博愛編本格始動。アヴドゥルさんはマロニエに自分のお店を開店。ご飯を振る舞ってもらう兄弟たち、ルカ先輩、サムソン、コレットニャンニャンさん、そして…女の子?
 「で パパって神様だったんだ?でも僕らにはそんなこと関係ないことなんでしょ」
 ざっくりしている博愛。暑がりや・寒がりや・剣自慢に関して反応すら描かれず、前回獣使いから「急にパパが神様とか…兄弟でも言えるか…俺が一番家族に心配されてるのに…」と言及ありましたが、もし言ったとしても普通に流されたかもしれません。

 アヴドゥルさんは好色の国外交において案内人になってくれるそうで、この人も目的が掴めない人ではありますが………現在時点で想定できる好色の国編メンバーが、博愛・宰相・アヴドゥルさんと、しょ、少女漫画とは…?
 そんなアヴドゥルさんの指輪に反応し貝殻を物々交換しようとする少女は、獣使いから「チビ」と呼ばれ…チビ!?この瞬間まで若いフラカンに人間態があると全然思い至らなかったのですが、サトゥルノさんも人間態あるから当然といえば当然か。女の子の姿で「チビ」は凄く違和感があるな。
 チビの無邪気な振る舞いをたしなめ、他人のアヴドゥルさんに頭を下げる獣使いから、生き物の国編において世界に向き合う覚悟を得た男の成長を感じます。生き物の国に定住することは、自分の口で家族に伝えたよう。「一等地もらえ」からこれルカ先輩に伝達は全投げされるやつではとずっと心配していたのですが、獣使いホント偉くなった。良かった良かった。
 しかしシロネンのことは伝えていないようで、現地で彼女出来たって言えし。(獣使いらしいところではありますが)数年後ハラペコとかが遊びに行ったらしれっと子供つくってそう。
 国を離れる五男の言葉に、しんみりした雰囲気になる兄弟たち。この場に長男(ブラコン)いたら多分号泣している。
 
 一方のハラペコはマロニエにとどまり続ける予定。食べ物の国の思い出を微笑みながら回想するものの… 
 「僕の外交 結果的にはよかったんだけど 僕ね…コレットに何回もすごく怖い思いをさせちゃって 僕が誘ったから…そのことは今でも後悔してる…」
 コレットは「あのとき誘ってくれてありがとな」と言ってくれたものの、コレットを危険な目に合わせてしまったのは彼自身の異形化能力の責任も大きいので、この十字架は背負い続けていくのでしょう。ハラペコは本当に顔に似合わず紳士路線だ。

 ハラペコの後悔を受けて、宰相を外交に誘ったことに「しまった」の顔をする博愛。
 「僕はそんなつもりじゃ…ヒューゴを危ない目に合わせてはいけない」
 今回、博愛が宰相を外交に誘ったのは、父親関連の情報を知るための打算の要素があったりするのかなと思ってたんですが、そんなことはないのか。純度100のLOVEなのか。
 店を飛び出す博愛に、街ゆく人が声をかけ、女性につきまとう男性も彼の顔を見て怒りを忘れる、モテモテ描写。

 「僕は誰でも一瞬僕に気を許す瞬間を作ることができる(家族はのぞく)」

 便利!
 
 長男:催眠術
 三男:氷出せる
 四男:多分炎出せる
 五男:動物総攻め
 七男:大食漢+怪物化
 次男、社会で生きる上で圧倒的に使い勝手がいい…そして、ハラペコは使い勝手が悪い。だからこそ、能力を制御する(食糧を得る)ためのコミュニケーションスキルの部分を意識的に高める必要があったんだろうなあ……

 「他の国が僕らの不思議な力を欲しがってるって聞いたけど 僕の力は外交に使えたら結構便利かもね」
 少しやさぐれた言い方だと感じるのですが、この能力持ちゆえの生きづらさもあったりしたのでしょうか。

 そして回想。幼い頃の博愛と、窓の外を見る若い宰相。親戚だけあって、宰相は少しジャスティスに似ています。
 宰相の骨董品を見せてもらっていた博愛は、コレクションのひとつ、砂漠のバラの話を聞く。森の中では遭難したとしても木の実や水が手に入る可能性があるが、好色の国の大半を占める砂漠の場合はそれがない。だから、好色の国の人々は神様を信じない。
 「神様は助けてくれないってこと?」
 「そうだね 助けてくれる確率はとても低いね だから砂漠の人はね 誰かを助けるのは神様じゃなくて自分だと思っているんだ」
 「うん 僕もそれがいいと思う」

 アヴドゥルさん(神仏の類であるヒンヤリが見えない)のスタンスに納得〜と同時に、博愛が宰相に向けている顔は見惚れているようなものに見えるのですが、やっぱLOVEなのかここ…
 そんな宰相の見つめる先にいるのはペレグリナス…そこもLOVEなのか?男たちの感情が渋滞しています。

 場面変わり現在。宰相と城代と国王が今回の問題おきまくり外交について話し合い。外交を推し進めていたのは宰相、国王と城代は否寄りの立場だったことが既に語られていますが…
 ブルーノ様の身内で、バリバラ・ペレグリナスと色々あったであろう重要キャラクターのライオネル国王ですが、やっと登場。
 「彼らの力は本来この国のものではないし 一ヶ所に大きな力が集まると世界の均衡が崩れるだろ」
 以前の宰相の独白でも近い台詞ありましたが、読者へのわかりやすさ重視か、国王と城代に対して改めて主張。マロニエ出身の子供たち危険に晒すのは違うよねと反論する城代が、ちょっと親の目線入ってていいセリフ(城代は眠くないの義父ですし)
 
 そこにかけつける博愛は、宰相の身を案じて騎士長補佐の話を撤回。
 「そんなつもりじゃなくて…いつも君が暗い顔をしてるのはこんな夏でも冷たい城に閉じこもってるからじゃないかと思って…」
 やはりそこに打算はなく。宰相が博愛の気遣いに困った表情をするのは、博愛を他国に捧げようとしている罪悪感のあらわれでしょうか。
 
 宰相と博愛の親しさをつっつく国王。博愛は骨董品や宝飾が好きで、宰相のコレクションをよく見に行っていた。しかし宰相が骨董品を手放してからそういった機会も減り…「地位も領土もあるけど…もっと深く満たされたい…」の台詞や、ナレースワンさんとの会合の際など、これまでも何度か匂わされた宰相の変化の部分ですが、ペレグリナスが関係しているような気がしてならない。
 
 好色の国とマロニエ王国はかつて領土のことでトラブルがあったよう。国王の命により、好色の国の女王の機嫌を取るのが今回の博愛の外交の表向きの目的に。やはり博愛の能力、便利。
 重臣を行かせた方が印象が良くなる観点から宰相をそのまま同行させようとする国王だが、きっぱり断る博愛。
 「パパのことで危ない目にあうのは僕ら兄弟だけで充分だ」
 眠くない、獣使い、ハラペコ、暑がりやと皆大なり小なり血の負い目を背負っているんですけれど、元凶であるペレグリナスの心証がさがりまくりです。子供がこういう思いすることまでちゃんと見込んで子供作ったのかなあ。
 
 去っていく博愛を見つめる国王。
 「どこの国の国王が言ったんだっけ 『全部神様が決めたこと』って」
 国王は残りの外交の延期を画策。バリバラと醜聞の噂があったことがゾーイから語られている人物ですが、この人もどういう風にペレグリナスと通じていたんだろうか。
 「これがほんとに全部ペレグリナスが描いたシナリオだったら 僕は好色の国に行くことになっているんだろうか」
 「なんとも言えないが 君のところに小さい頃から博愛は出入りしていたからな 行くことになってたんじゃないかな」
 「そうだね 僕もそう思うよ」

 場面変わり食堂。好色の国に西の領土が取られそうになったのを、バリバラが賭けに勝利して取り戻した情報が乳母様から語られ、国王の言うトラブルはこの件が原因っぽい。バリバラのギャンブル運により、一家は将軍の地位を得たそうで。バリバラ様甲斐性ありすぎる。
 その因縁由来で好色の国の女王様に冷たくされることを期待する博愛は、能力ゆえでしょうか、歪んでいます。

 ついに出発日。博愛の顔の作画はペレグリナスに近いですが、書き分けの問題ではなく、作者も意識的に寄せていたようで、自分が一番父親に似ているか問う博愛を、似とらんと一蹴するバリバラ様。一貫して、「女」より「武人」や「母」の要素が強いバリバラ様。
 騎士長補佐は替わったと事前に知らされていたものの、旅立ちの場にいたのはーー宰相。
 「気が変わった これがペレグリナスが作ったシナリオなら 僕の旅にどんな結末があるのか知りたくなったんだ」
 神様が決めたことに抗うのではなく、その先を知りたい、という考えになるのは、ペレグリナスへの情念を感じる部分。その情念がどういったベクトルの感情なのかはわかりませんが、彼が信心深いキャラクターなのも、ペレグリナスの存在ありきなのではないかと思ってしまいます。

 宰相の覚悟を見て、昔を思い出す博愛。若き日の宰相の視線の先にいる男。振り向いたペレグリナスはニヤリと微笑み、その左腕にとまるのはカラス。開幕、宰相が祈りを捧げる像が、同じポーズをしています。
 今まで、妻と子を想う父として描かれてきたペレグリナスがこういう表情をするとは思わず、今回一番インパクトあったシーンでした。
 「それじゃ一緒に立ち向かおうか」
 ペレグリナスへの個人的な感情が原動力にある宰相の心情を汲んだからこそ、身内の問題と捉えていた父親の負の遺産に、巻き込みたくなかった宰相を巻き込ませる覚悟を決める博愛。ペレグリナスの筋書きを受け入れている宰相に対して、その筋書きを許したくないのが、博愛なのではないかなーとは思うところ。砂漠の花のやりとりって、神の庇護下を抜け出して生きる布石だと感じますし。
 …………博愛のライバル枠、父親なのでは……

 チビは馬車に紛れ込み、好色の国に行く予定。女児が加入するフラグが立ちましたが、卵の中にいたときもチビはしっかり加齢していたらしく、中身は350歳だそうです!
 しかしこのチビの行動の原因、博愛が無自覚に指輪をほめて口説いたせいでは…ペレグリナス←宰相←博愛←チビ という混沌の人間関係になってしまうのか。